真夜中の施設を 廻っていると、
灯りのついている部屋があります。

真夜中の施設を 廻っていると、
灯りのついている部屋があります。
中からは、なんとも大きな声にもならない声が、
聞こえてきます。
こんばんは。どうされましたか？
と、その居室の扉をユックリ開けてみました。
すると、今夜の夜勤者、スズキ君がいました。
お！今夜の 夜勤は、スズキなんだ。
そうですよ。
なんだ！なんだ！スゴいな！この洗濯物！
今日は曇りで、乾きが、悪かったンですよ。
へえぇ…全部、たたむの⁉︎大変だ！
一晩あれば、ナントカなりますよ。
バアちゃんは、どんな様子？
やっぱり、夜は、淋しいみたい。
そうかあ…
○☆×♪%¥〒×○… (バアちゃんの声)
バアちゃん、いるよ、ボク、ここにいるよ。
☆%♪¥〒×○☆%…
そうそう、大丈夫だよ。
&@#%♪〒☆…
そうだねぇ、困ったねぇ。
夜間せん妄
…と、いってしまえば、そうなんですが。
バアちゃんは、
夜が、怖い。叫びたいほど、怖い。
暗がりが、寂しい。死んでしまうみたいに、寂しい。
昼間は、全然、穏やかバアちゃん。
毎日 “夜” が、来るたび 叫びたいほど、怖くて、
死んだように 眠れるまで、
声で、誰かを 探している。
バアちゃんの、今までに、何があったのか、
知る由ない私たちは、
90年の のしかかる重さを　
今 ここにいる 一晩を
オロオロしながら
そばにいるだけ。
スゴいよね、叫びたいほど、寂しいって。
手を握ると、目をつぶって穏やかですよ。
スズキがいるから、良かった。
僕は、ここに居るだけなんですけどね。
んじゃ、邪魔したね。お疲れ様です。
高口さんも早く帰って下さいよ。
お疲れ様です。