お年寄りが、亡くなった朝。

お年寄りが、亡くなった朝。
夜勤は、イケちゃんでした。
おバアちゃんは、その日の夕方、
豚カツをみんなと一緒に 食べました。
いつも通り 就寝されました。
だけど、真夜中に 息が険しいことに
イケちゃんは気づきました。
同じフロアの夜勤の仲間と一緒に
血圧、体温、SPO2を測って、
自分の目で観察したことと合わせて、
看護師に、オンコールしました。
看護師は、上体の挙上と、クーリングを指示して、
予想される経過と、観察ポイントを伝えました。
イケちゃんは、指示内容を記録して、
おバアちゃんの様子と バイタルを 記録していきました。
朝方には、少し穏やかになった様子でした。
でも、ずっと心配だったので、
いつもより早めに出勤した先生に 駆け寄って、
すぐ診て下さい!って、お願いしました。
先生が、声をかけて、おバアちゃんは、
なんだか言ったような、目を開けたか開けないか、
そのまま 力が抜けたみたいになって、
先生は、少し心臓マッサージをして、
「ご家族に 連絡して下さい」
と言って、おバアちゃんの手を握っていました。
部屋に 駆けつけてきた ご家族は、
泣き崩れました。
「昨日は、あんなに 元気だったのに」
そうです、昨日は、ニコニコ、五月の行事に参加してたのに。
先生が、低い声で、説明しました。
胸が一杯の ご家族は 頷くだけが、精一杯の様子でした。
ご家族だけで、お別れの時間を持って頂いたあと、
イケちゃんが、自分の書いた夜勤の記録を
夕飯のところから、読み上げるように、
ご家族に 伝えました。
豚カツを どんなふうに食べて 誰とお話ししてたか、
息が変だと思ったのは、こんな息遣いで、
バイタル測る時に、こんなふうに少し怒って、
しばらくしたら、こんな様子で 眠っていて…、
涙が、ポロポロ出てきて、
鼻水も、グジユグジユだったけど、
全部、言えました。
ご家族は、
「よかった。よかった。
じゃあ、大往生だったのね。
ありがとう。よかった。」
と、イケちゃんの背中を さすってくれました。
恥ずかしがり屋で、自分のことは、
なかなか 上手く言えないイケちゃんですが、
今日のイケちゃんは、
よかった、よかった。
夜勤明けだったけど、
ご家族と一緒に おバアちゃんの最後の入浴介助をして、
お家に帰る お見送りをして イケちゃんも 帰りました。
お疲れ様でした。
今日は、ゆっくり休んで下さい。