介護保険施設の人員配置基準が、
現行の3:1から4:1に緩和されたら介護現場はどうなるのか

『介護保険施設の人員配置基準が、
現行の3:1から4:1に緩和されたら介護現場はどうなるのか』
以上のテーマを介護現場で直接働いていない人にも、わかるように伝えたい。
【資料1】
『ユニット型介護保険施設の現行(2022年)人員配置基準』
それは、
利用者(お年寄り)定員3人に対して、
介護職員又は看護職員が常勤換算で職員1人以上の配置を
基準としています。
(例)利用者定員が100人の介護保険施設の場合
   施設全体で、常勤換算で最低33.3人の
   介護職員又は看護職員の雇用並びに配置が必要。
更にこの基準に加えて、
以下の3要件も介護保険法の基準として求められています。
①昼間の時間帯(8:30~16:30)は、
 1ユニット毎に常時1人以上の介護職員又は看護職員を
 勤務表の段階で配置しておく。
②夜間の時間帯(16:30~8:30)は、
 2ユニット毎に常時1人以上の介護職員又は看護職員を
 勤務表の段階で配置しておく。
③ユニット毎に常勤のユニットリーダーを配置すること。
1ユニットには、利用者(お年寄り)が10人 ~15人います。
2ユニットには、利用者(お年寄り)が20人~30人います。
※今回は1ユニット10人で説明します。
【資料2】
常勤換算方法で3:1以上の介護職員・看護職員の配置
というのは、
24時間365日(常時)3名の利用者(入居者)に対して、
1人以上の職員が出勤しているということではない。
(一般の人は、このように解釈していることがある)
施設全体の介護職員・看護職員の1ヶ月間勤務時間総数から
算出された常勤換算値が、3:1であるということ。
(例)
施設の定員数100人に対して、 33,33人の介護・看護職員
1ユニット 1 0人定員に対して、 3,33人の介護・看護職員
2ユニット20人定員に対して、 6,66人の介護・看護職員
ところが、この3:1基準の人数配置、
つまり、1ユニット3,33人の体制では
勤務が厳しくなり、勤務表も組めません。
何故なら、
ユニット型介護施設の人員配置基準である
①昼間の時間帯(8:30~16:30)は、
 1ユニット毎に常時1人以上の介護職員又は看護職員を
 勤務表の段階で配置しておく。
②夜間の時間帯(16:30~8:30)は、
 2ユニット毎に常時1人以上の介護職員又は看護職員を
 勤務表の段階で配置しておく。
以上の①②を果たして勤務表を作成すると、
3:1基準では、
厳しい勤務となり、勤務表が組めなくなります。
【資料3】写真を見て下さい。
1ユニットでの1日あたりの最低基準(①②)を満たす
職員配置例を3:1の人数で示しています。
勤務が厳しいというのは、
・3:1基準の職員数では、①②の最低基準をクリアしても、
日勤者を確保することができない。
・昼間の時間帯には1人か、多くて2人までしか配置できない。
・2人の時間帯のうち1人は、入浴業務になることが多い。
よって、昼間の時間帯は殆どユニット内1人対応となる。
・深い認知症の方、食事介助が必要な方などの1対1対応が、
かなり難しい。
・夜間の時間帯での夜勤者の休憩中の支援者不在、
 または、休憩が取れない体制となっている。
【資料5】こちらも写真を見て下さい。
1日あたりの最低基準(①②)を満たす勤務表例に示しました。
勤務表が組めないというのは、
・ユニット型介護保険施設では最低基準(①②)と
 週休2日(公休)を守るためには、1ユニット4.0人の
 介護職員・看護職員の配置が必要。
・介護保険法(人員配置基準)、労働基準法を守るためには、
 利用定員100人の施設全体で3:1(33,3人)では不足する。
 少なくとも40人の介護職員・看護職員の配置・雇用が必要。
・常勤換算値で言うと「3:1」ではなく、
 最低でも「2,5:1」の職員配置・雇用が必要。
【資料5】
ところが、
先に【資料4】で示した「2,5:1」の職員配置では、
年間5日以上の有給休暇の取得をはじめ、
育児,産前産後,介護,慶弔などの
各種休暇を想定していません。
また、1日6時間以上、月に45時間以上の
時間外勤務が認められない中、
「急な病欠対応」「急変時対応」「介護事故対応」「記録」
をこの「2,5:1」の職員配置で職務として果たすのが
困難となります。
働きやすい職場環境・人材育成などに必要な、
「委員会活動」「研修会・会議などの参加」「レクリエーション活動・企画準備」は想定外です。
よって、
◆職員の健康管理と安定した業務遂行を果たすためには、
「2,0:1,0」の体制が望ましい。
殆どの介護保険施設がこの人数配置と考えられます。
◆働きやすい職場環境を作る・人材育成を実施するためには、
 「1,8:1,0」の体制が望ましい。
◆個別ケアを実践するためには、
 「1,0:1,0」の体制が望ましい。
【結論】介護保険施設で、
ユニット型介護施設の人員配置基準である
①昼間の時間帯(8:30~16:30)は、
 1ユニット毎に常時1人以上の介護職員又は看護職員を
 勤務表の段階で配置しておく。
②夜間の時間帯(16:30~8:30)は、
 2ユニット毎に常時1人以上の介護職員又は看護職員を
 勤務表の段階で配置しておく。
以上の最低基準である①②を順守して、
週休2日(公休)、年間5日以上の有休休暇
を取得するためには、
「2:1」の人員配置が必要。
よって、
現行では「2:1」でなければ勤務が厳しく、
法律を守った勤務表が組めなくなる。
「4:1体制へ人員基準緩和」では、
勤務が成立せず、法律を順守した勤務表が作成不可。
このような説明で、伝わりますでしょうか。
ご意見ほか、力をかして下さい。
よろしくお願いします。