意志を持って展開する

『個性を活かす・介護を活かす』
そのための『管理』の理解はなかなか大変なのですが、
セミナー参加者の鞆隼人さんが、
セミナーレポートをまとめてくれました。
ここに紹介させて頂きます。

六月某日、全国各地から対面、オンラインを含め、
多くの介護事業所の管理者たちが集まった。
理由は一つ。
「成功に導く」と謳われたそのセミナーに参加するためだ。
講師は高口光子氏。
しがらみから解き放たれた後でも氏の語ることは変わらない。
そのぶれない軸はまさに今回のセミナーの根幹を雄大に示したものだった。

自分なき者に介護は無理。

自分とは思い、考える生身の人間。
その思いを届けたい他者がいてこそ自分であり、
分かち合い共に繰り返していく人たちこそチームである。

そしてチームには必ずリーダーが必要だ。
今回はその中でも上級リーダーとは何か、
について深掘りしていく。

一般的なリーダーはまず生活を作り上げていくためのツール、武器を手にする。そうやって色んなのことに気づくうちに、あれが悪いこれがダメだとわかっていく。いや、正確に言えばわかってないのだ。

「これは私の問題だ」

そう思えた人が上級リーダーなのだ。責任の所在が自分にはないようなものに対しても、責任は私にある、そう言える人。個人目標と組織目標が同義だと捉えられる人のことをいう。

主にその役割はフロア主任、職能主任、ケアマネジャーが担う。過去、これらを全てこなしていたのが婦長や寮母長と言われる人達だが、それは到底不可能だったのだ。

生活の場のケアの専門性が問われている。
それは「人としての関係をつくる」「継続を保障する」「責任をとる」だ。

集団処遇のような流れ作業では人として出会えない。
すると職員はプロ意識を持てず、技術も向上せずに、安易な効率化を図り、嫌気がさして辞めていき、継続困難な経営になりうるのだ。

だからこそ、サービスの質を確保、向上していくために、システムの見直しが必要不可欠だ。
申し送り、サービス担当者会議、全体会議、委員会。
各リーダー達は、自分はそれらの中でどのような役割を持ち、
行動するのかを捉え直す。
これらがきちんと機能している施設は強い。

どのような施設も、設立時は夢を語り合った事業所も、
長く続けると必ず腐る時期がくる。
そんな時、上級リーダーはどうするべきなのか。

それは、事業所がその関係を停滞、鈍化させないように「負荷」をかけていくのだ。

家族からの身体拘束の依頼。重大な事故発生時。深い認知症の方の受け入れ。そしてターミナルケア。

自発的で、創意工夫が必要で、尚且つ切実な状況にある中、それは「負荷」となりチームの前に立ちはだかる。

そんな時、リーダーは自らの主軸を持ってチームに問いかけるのだ。

「何のための私たちなのか」と。


氏のぶれない軸はまさにこれだ。
施設を腐らさないため。継続運営していくため。お年寄りとほんとの意味で出会うため。

全てはこの一点に繋がっている。何のためにいるのか、何の仕事をしているのか。

その意味と価値を問うていくことを諦めない人こそ、上級リーダーであり、「成功に導く」存在なのだ。

仕組みやルールやシステムはもちろん大切だ。それがなければそもそも仕事は成り立たないだろう。
だが、いつだってそこには人の意志が介在する。

意志を持って展開していく。

そんな人が今の介護界には必要なのだ。