以前、介護職として 一緒に 働いていた職員

以前、介護職として 一緒に 働いていて 異動となり
他の 施設で 働くことになった 当時の職員と
久しぶりに 会って、
「美味しいモノ食べよう!」
ということになりました。
注文した お料理が 運ばれてきて、
「元気で やってる?仕事には 慣れたかな?」
「まあまあです」
明らかに表情は、暗い。今にも 泣き出しそうです。
「何か あったの? 聴くだけしかできないけど、
 よければ聞かせてよ」
きっと、話したいだろうに 話せるまで 整理できていないのか
話したいことが 重すぎて お腹から 口まで たどり着かない感じ。
しばらく 沈黙。
その職員が、ポツポツ話し始めた それを つなげると
事故の話しでした。
その日、彼女は遅番。
自分が夕食介助を担当していたフロアで、
日頃からご自分で食べられているお年寄りが 、
咳き込み、息苦しい表情で声も出せない様子となり、
みるみる真っ青になって グッタリしたので、
「窒息だ!」
と思い、声をかけ 背中を叩き ハイムリック法をやってみた。
それでも 全然状況が 変わらないので、
いつも 食堂に 置いてある 吸引器で
口腔内から咽頭まで懸命に 吸引した 。
その場にいた職員みんなで 集中して
急変に対応する職員
看護師 上司に そして救急車と次々 連絡する職員
不安そうに その場にいる 他の お年寄りに 声をかける職員
それぞれが その時できることの 精一杯をした。
みんなの 努力の甲斐なく お年寄りは 運ばれた 病院で
数日して亡くなられてしまった。
ご家族は、驚きと悲しみの中にあるにも かかわらず、
「今まで、ありがとう。
 最後まで 好きな物、食べられて 良かった。
ビックリしたでしょ、気落ちしないでよ。
このことで 介護辞めたりしないでね。」
と、職員のことを 気遣ってくれた。
「大変だったね。」
途切れ途切れに 話す状況を 私は 胸に 思い浮かべながら、
話してくれた その職員の 気持ちを 思って 言葉を探していた。
私は、突然の事故で お年寄りを 失った職員を
思いやるつもりだったが、
職員が 本当に 苦しんでいたのは そのあとの ことでした。
職場では、事故を 振り返る 話し合いが 持たれました。
その時、職員たちの前で、管理責任者が、
「吸引吸痰の 研修を受けて、登録している介護職しか、
吸引器を 使った吸引吸痰行為を しないように。
それは、法律に触れる行為です。
お年寄りの状態をみて 介護判断する時は、
法律違反を しない介護のほうを 選んで下さい。
 私はこの場を持って説明しましたからね。
 それでも、法律違反の介護をしたなら、
 それは、あなた達の責任だからね」
と 言ったというのだ。
この説明が管理責任者の
明らかに 間違った解釈なのは、すぐわかる。
日常的に 継続して 行う 吸引吸痰行為は、
研修を受け 登録されている 介護職が 行うと
確かに規定されている。
しかし、今回のように、突然の急変時に
これは あてはまらない。
話してくれた彼女もこのことは当然、知っていた。
「法律も 正しく解釈できないような責任者のもとで
働くのが 嫌に なったの?」
しばらく 沈黙。
職員が 少しずつ 話す。
「事故で急変で…お亡くなりになったから、
 責任者も慌てたっていうか緊張したと思う。」
彼女は、管理者の気持ちを慮っていた。
「だから、本当の気持ち…本音が出たと思う。
 こんな時に介護が 何か っていうか
 …自分の介護も無い人と
これから どうやって 働いていけばいいのか わからない」
彼女は、上司の責任者としての 未熟は 責めなかった。
「人として 信じられない人と どうやって
働いていけば よいのか」
ここを 私に 問うてきました。
もう一度、その職員と 会う約束をして、
お店を出るのが、今の私の 精一杯でした。
私は介護職が 潰れる時を さんざん見てきた。
この介護職に しっかり伝えきることが できなければ、
私は、ダメだ。
もう一度、会いましょう。