病院・老健・特養・有料老人ホーム・グループホームなど、各種のサービスを営業している法人から、 アドバイザーの依頼がある。

病院・老健・特養・有料老人ホーム・グループホームなど、
各種のサービスを営業している法人から、
アドバイザーの依頼がある。
「認知症の患者・利用者の周辺症状を制限する態度で接する」
「身体拘束がいまだに続いている」
「とにかくいつも急いでいる」
この状況を改善しようと法人は、
職員を研修会に参加させ、
リーダーに部署目標を持たせ、
委員会にマニュアルも作らせた。
しばらくは気にして行動しているようだが、
いつの間にか、また同じ状況に戻ってしまう。
現地に来て、直接指導して欲しいという依頼である。
それではということで、現地に行って研修から始める。
先ずは「介護の基本」の話しをしてみる。
どの職種の参加者も軽く頷きながら聞いてくれる。
そして、「良い介護・悪い介護」のテーマで、
グループワークを始める。
どのテーブルも、みんなが言いそうなことを
想定しながら、みんなと同じように話している。
職員はグループワークより、なんで今の時期に、
こんな講師でこんな研修を法人はするんだろうということを気にしている。
発言で共通しているのは、自分の考え・立場などを
はっきりさせないままにするところ。
そして一枚の写真を見て頂く。
この手は長期にわたってミトンを装着させられた患者さんの手指拘縮と変形です。
この方に麻痺はありませんが、この拘縮と変形のために、
食事・排泄など生活行為が不自由となりました。
対人援助において、
身体拘束は、看護・介護・リハビリ他どの視点から捉えても、
人の生きる力を削ぐ「悪い」ことなのですが、
何故、ここの病院・施設の各現場で、
ダラダラ続いているのでしょうか。
『職員人数が少なく、業務量も多く、
見守りできないからじゃないでしょうか。
知らんけど』
こんな感じの発言がダラダラ続く。
それでは質問を変えましょう。
何故、あなたは「身体拘束」を続けてきたのですか。
先輩がそうしていたから、
自分もそうしなければと思ってやった。
一職員である自分には、
みんながやっているようにする以外の選択肢は無かった。
身体拘束以外のやり方を上司から教えてもらっていない。
フロアのみんなが変わらないと身体拘束廃止は無理。
それでは、身体拘束をしないケアの方法を
今から私が資料を持ってお伝えして、
理事長命令で身体拘束廃止を出して頂ければ、
この法人の現場からは身体拘束は無くなるんですね。
研修会場はシーンとなる。
あなた達は、ケアを教えてもらったことはあるだろうけど、
自分のケアを考えたことはあるのですか。と、質問する。
考えてみましょう。
「みんな」が悪い介護をしているこの職場。
でも「私」は、そうした「みんな」のメンバーに
ならないこともできたのではないでしょうか。
何故なら、
私は、勉強してるから、資格があるから。
私には、意志があるから、思いがあるから。
先ずは、悪い介護に加担したことを「私」は、
自分のしたことだとシッカリ自覚して下さい。
そうすると、不安になります。
何が本当に良い介護なのかを誰も教えてくれない現場で、
自分はどういう介護がしたいのかを
自分で考えなければならないからです。
自分が今までしてきた介護を
自分のこととして自覚するからこそ、
本当に自分がやりたい介護を自分で考えることができます。
今、この時の現場介護には、絶対という確かなこともないし、
誰もこれで間違い無し!という正解を与えてはくれません。
この状態の中で、自分の介護を自分で選んで決める。
または、そういう仕事をしたいとあなたが、
意志することが無ければ、良い介護は、ここには無い。
職員研修は、ここからが本番となります。